釣行日誌 NZ編

春、西海岸、河口近く (その2)

『これはドライでいただきかな..............』

 アダムスの結び目を確認し、4ポンドのルアー用ラインの傷の有無をチェックし、距離を見極めつつ長めのティペットをキャストする。

『あ、いかんいかん。だいぶ逸れた。』

 2投目。

『あ、まだだめだ。距離が足りん』

 3投目。

『う、ドラッグが.........』

 流れが無いように見えて、淵の終わりから瀬に流れ出す水流が、せっかくいい位置に落ちたドライフライをすぐに引っ張ってしまう。

 いかんいかんと思いつつ、慎重に狙っていると、またまた日が翳ってしまう。ここは忍の一文字で、雲の切れるのを待つ。

『!!』

 でかいブラウンが、流下してきた白い固まりに反応し、浮上し、くわえ、飲み込んだ。理想的にドライフライが流れれば、まちがいなく喰うであろう。

 4投目。

『うわ! 下手くそ!』

 投げたフライは、はるか上流に落ちて、リーダーの太いところが鱒のすぐ近くに落ちた。なんとか、鱒を脅かさずに済んだようで、ゆっくりとアダムスが鱒に近づいてゆく。しかし、鱒の頭上を流れた私のフライには、青い背中は、まったく反応しなかった。

『うーん。フライが違うな........』

 スプリングクリークのちびっ子ニジマスに絶大な人気を誇る、極小の焦げ茶色ドライを結び、60cm級と思われるブラウンに投げつける。まっすぐにラインを落とすと、ドラッグがかかるのがオチなので、ゆっくりとロッドを振り、フライを鱒の上流1mの位置に浮かべ、ティペットにネガティブのカーブを残しつつラインは鱒の1m右側に落ちる................というのが理想の世界での私のキャストなのだが、あいにく現実の世界では、5~6回投げて1回ほどしかうまい場所にフライを置くことができない。それ以外のキャストで鱒を驚かさなかったのが奇跡的な幸運であった。

 それならば、と、まっすぐ投げておきながら竿先を振ってワラワラとラインを落とし時間を稼ぐように作戦を変えてみた。しかし、これはこれでフライの落下地点を正確に定められない欠点がある。再び失速カーブキャストに挑み、さらに数投やりなおしてみる。

『これでよしっ!』

 フライを換えて15投目ぐらいで鱒の位置に流れる線上にドライフライが落ち、ゆっくりと鱒へ向かって流れてくる。30cm、20cm、10cm。スススススゥーッとドラグがかかり、航跡を引きながらフライが引かれだす。青い背中がゆっくりと浮かび上がり、身を捩って頭をフライに向ける。フライがさらに速度を上げて鱒から遠のく。なおも追ってくる鱒が下流に反転し、こちらに向かって泳ぎだす。

『うわっ! こっちに来るなっ!』

 思わず身をかがめながらも鱒を目で追う。フライまであと10cm足らずまで迫っていた魚影が、ふいに追い食いを諦めて上流へ戻る。しゃがんだせいで水面の見通しが悪くなっているが、影がもとの位置に戻るのがなんとか確認できた。

 そっちがその気なら、いきなり喰いつきたくなるようなごちそうを試してやろうかと、10番のビートル、14番の小振りなロイヤルウルフ、16番の無名アダムス変形などをいろいろ試す。8番のバッタも試そうかと思ったが、フライが落ちただけで逃げられそうでやめた。

『ううむ。ドライは諦めるか...........』


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