釣行日誌 NZ編  「5000マイルを越えて」

ヘリは舞い立った

1997/01/13(MON)-1

 月曜の朝は7時に起きた。朝食を食べ支度を整える。ビルが、すぐに釣りが出来る支度をして、キャンプに必要な道具や衣類はパックに詰めて彼に渡すように言う。あわててウェーダーとウェーディングシューズを履き、着替えの入ったパックを渡す。ビルと松延さん夫妻が乗り、5人分のキャンプ用具を積んだテラノが先に走り出す。続いて、私がデビッドのスバルレオーネワゴンに乗り込み後を追う。

 スタンドでガソリンを入れてしばらく走ると、羊の群が道路にあふれ出しており、行く手を遮られた数台の車がじっと待っている。

「うわぁー。まるで映画のようだ!」

 と、年甲斐もなく喜んでいると、ヒツジの回りで2尾の牧羊犬が賢く立ち回り、見る間に群れを牧場に追い込んでゆく。ふたたび、デビッドのスバルが走り出す。

 モアナの町から60キロほど走り、幹線道路を左に入り、踏切を越えて車は牧場内の農道をゆっくりと走っていく。空き地まで来ると、デビッドが車を止め、ここでヘリを待つという。車からロッドとリュックを出し、臑にネオプレンのゲートルを巻く。デビッドも古いリュックを出して背負う。彼は、化繊のタイツにショートパンツ、それにウェーディングシューズというキウィ・フィッシングスタイルである。彼の靴やリュックのくたびれた布地と金具からは、「生活」「生業」といった重みのある色合いが放射され、私の身の回りの「趣味」「アウトドア」といった軽い雰囲気はたちまち霞んでゆくのである。

 牧場の朝は、とても穏やかである。しっとりと朝露に濡れた牧草の上には雲雀がさえずり、遠くからは牛の鳴き声が聞こえてくる。この雰囲気を何と言えばいいのか、と考えていると、デビッドが一言、

「peaceful.」

と言った。

 そうしてヘリを待っていると、農道の向こうから、材木をいっぱい積んだトラックがやって来た。デビッドが手を上げると運転手がトラックを止め、しばし世間話が始まる。

トラックが通りかかる

 荷台には、日本のヒノキに似た木肌の、直径1mほどの見事な材木が積まれている。運転手に訊くと、「マクラカパー」という木だと言う。デビッドの話では、あの材木は私有地から切り出された高価な住宅用木材で、なんと日本向けに輸出されるのだという。樹齢はおよそ80年以上であろうとのこと。ここで木を切り出し、はるか太平洋を越えて船で運ばれていってもなお、国産の木材を凌駕する低価格と高品質をあの木は持っているのだ。日本の森と林業はどうなってしまうのか?

 かなたから、カン高いエンジン音が聞こえてきた。デビッドが、ロッドとリュックは俺が持って乗るから、お前は俺の先を歩いて前部席の真ん中に乗り込め。帽子は飛ばされないようにアゴヒモをきつく締めて体は低くしておけ、と教えてくれる。みるまに近づいた黒い機体の新型ヘリが牧場に舞い降りる。

ヘリが来た

 ローターの角度を変え、アイドリング状態になるとかなり風は弱まる。言われたとおりに乗り込むと、デビッドが後から乗り込んできて、パイロットと3人並んで前席に座る。ふわりと機体が浮き上がり、牧場とマウンテンリバーを眼下に見ながらヘリが高度を上げる。


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