父の釣り口伝

アメノウオ一代 その9  若い頃には毛針も振った

 それからアメ釣りでほうぼう歩く時分に、今日はテンカラ打ってやりましょうと思って豊根の蔵平へ行って。

 ちっとも出んもんでくそったれめがあっちへ行きましょうと思って竿担いでテグスを持ったつもりが流れておっただなあ、うしろでカクンッとしてなんだ知らん?と思ったらでーかいこんな25センチぐらいのが食いついておりゃがって。笑ったなあ。

--テンカラの竿はどうしたの?

俺が作ったわい。

--全部延べ竿で?

 延べ竿買ってきてな。でその時分にははい交通も良かったもんでなあ。豊橋行ってさあ延べ竿買ってさ、なんとか電車に乗せてもらってよ。(笑)

 竿、網棚に置いてさ。(笑) それから俺建具屋だら、竿を細ーい鋸でこういう風に直角に切るわけだよ。切っといて印篭に継ぐわけだ。ああなかかなこれでも考えただ、いろいろ。

--ふーん。

そりゃぁ、いい調子の竿が出来たで。

--それで馬の尻尾盗んで来たの?

 おう、中設楽のなあ、陸サん所の馬。みんなが行っちゃあ尻尾の毛を抜くもんで陸サしまいに怒っちゃって、

「ばばあ、これから野郎ンと馬小屋入れちゃあいかん!」

 なんちゅって。(笑)

 俺なんかおそがい(恐い)だもんで毛を抜いたときに馬に蹴られちゃいかんと思って、そーっとたぐってはさみでジョキン!とやるだもんで尻尾が見苦しいわなあ。(笑)

 こんなにひと掴みも取ってくるだもんで。陸サも怒るわなあ。

--馬素ってやあ俺らは見たこたあないんだけども、一本でどのくらい強いの?

 強いぞけっこう。そりゃあいいやつはなあギューッと引っ張ってプツンと切れるぐらいだよ。それをなあ、そのまま置くとなあ馬の脂で虫喰っちゃうんで、取ってきたら石鹸と湯で洗うだい。できれいにゆすいでなあ、それから根っこをギュッと縛って一本づつ抜いて使うようにして、うん。

 それがなあ、良い馬素は丸くてなあこう手でより良いけどなあ、悪い馬素は断面が平べったくてなあ、どだいおかしいだ。それだもんでどっかに良い馬素の馬がいるとみんながすまんが一本くれ二本くれって言って俺みたいにはさみでジョキン!なんちゅうやつもおる。(笑)

 あの陸サっていう人はほんとにしゃべらん人だったがしまいにゃ怒ったちゅってよう笑ったよ。


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