父の釣り口伝

アメノウオ一代 その19 おれに言わせりゃ・アメノウオ編  好きなポイント、好きな川

--それじゃあねえ、好きなポイント、好きな場所、好きな川は?

 そうだなあ好きな川っていわれてもなあ(笑)

 その前にねえどういう所におるかっちゅうことを研究せにゃあいかん。いわゆるアマゴというやつ、ヤマメじゃないあれはな、そっくりだけど違う。アマゴはねえ、暗いところが嫌い。それでよく開けた川で、しかもドウドウと滝みたいになっておる所にはおらんな。どっちかっていうと田んぼの中をだらーんと流れるようなああいう所に多いよ。

 ヤマメになってくると泡ぶくの中におったりするけどなあ。アマゴはどうもそのへん緩いところにおるなあ。瀬でもないが淵でもないが適当な石がゴロンゴロンしておって、こう流れていくっちゅうような所におる。それから岩魚は絶対に暗いところが好きだ。それで好きな川っちゅうとおれはまあお前らが知っとる川じゃあ、開田村の川なんか好きだったなあ、ああいう川。あんまり深くない川で。

--開田の川は安全だでいいわな。

 うん。まあそういう面もあるしさ。それから川を歩くに楽だもん。こんなに急なところ掻き上って竿をたたんでなんてどうもなりゃへん。そんな所にゃあアマゴおらんよ、割合に。そのかわりおれば大きいわ、そういうドバンドバンの所には。それと俺はどっちかっていうと小さい川の方が好きだな。(笑)

--出たね、あの薮釣りが。(笑)

 おう、薮釣りが。ほんとに。それでおれがそこらへ盛んに釣りに行く時分にゃあナタとノコギリの小さいやつを買い込んで、やたら切っては後から来たやつがいい目をするもんで、(笑) おれはここに立っておってあの枝一本切ればエサが入るっていうその枝だけは切った。他のやつは引っかけたってかまったこたぁねえだでなあ。

 それからあの時分には目も良かったし手も不自由じゃなかったから手首のスナップだけでなあ、それこそピッて振れば確実にエサをポイントに入れたよ。

--いまはちょっとさすがに苦しそうだね。

 うーん、ちょっと、いかん。

 それとねえ、アメ釣りってやつはおかしなもんで、たとえば午前中ちっとも釣れんでよう、昼からになって気圧のかげんだかバタバターッと釣れてみたりさ。それでここらへんの方言であの魚はアメノウオって言うだけど、おれはあれは「雨の魚」だと思う。

 昔なあ、横山君と豊邦のずーっと奥の方の小さな沢へ釣りに行って、横山君はアメがおると言うから午前中ぐらいやってみて、

「この川にゃあおらんぞ、横山君。」

 なんて言ってなあ、それでもくそごたがわいたもんで(むしゃくしゃしたもんで)、こんだあその次に水の良い日に行ったらバカスカ釣れたもんなあ。あの魚は水が出ると岩陰から出てくるだよ。

--このあいだの平谷も6月と9月と二回とも水が良かったもんね。(注:アマゴ釣りで水が良いと言う場合、雨による増水後のいわゆる笹濁りの状態をいう。)

 こないだ俺が行かまいか(行こう)と言ったのは雨が降った後でどうも今日あたり水が良いと思っただよ。それだもんでこれ1尾仮に百円と仮定しても一日千円の入漁料でめったなことで元を取れんということはないよ、正直言って。(笑)


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