父の釣り口伝

肇の魚釣り初め その7  夏の夜のナマズ釣り

 こんだあその時分には、なんだわい、夜、暑い晩、やっぱり親父がなあ、

「肇、カエルを捕ってきておけ」

 ちゅうわけだ。そのカエルちゅうのは春生まれて、夏になると三センチぐらいのカエルおるら、それをなあ、タモですくってなあ、カンカンへいれて何十尾か捕っておく。

 そうすると親父がなあ、庄内川の堤防で、ここでいう丸竹なあ、丸竹を採ってきて、長さ二メートルぐらいにして枝払って、それへタコ糸をなあ、そうだなあ一メートル半ぐらいしばり付けて。それでここでいうとふて針(置き針)の針へなあ大きい針をなあ付けて、それに鈴を全部つけるだ、先っぽへ。それを二十本ぐらい作ってなあ、束ねてかついで魚篭を持ってなあ今の時間で言やぁ七時頃、暗くなる時分に川へ行くだい。

 それでおまえも知っとるら、丸い建物があって水道公園だなんていったそれが当時水道の給水タンクだった(現在の中村水道公園の建物のこと)。そこに幅が三メートル五十センチぐらいの当時大用水って言ったんだが、田んぼに水を引く用水があるだ、その用水へ行くだ。

 そうすると用水の法は泥でこう斜めになっておって、ここんとこは杭がずーっと打ってあるわけだ。そこへ降りて行って、カエルを針へ殺さんようにちょっと引っ掛けて、取られんように親父が軸の長いこういう針なもんだから、この軸へ足をこうきゅっと縛ってよぉ、

--頭が下かん?

 頭が下。それで親父が

「肇、刺してこい」

 ちゅうわけだ。この法面の所へなあ、根っこをスポッと切ってあるらぁ、用水の法面は泥だもんで、このぐらいの勾配で刺すんだ。そうすると流速がいくらかあって流れとるもんで、一メートル五十センチの糸が斜めになって張って、カエルはまんだ生きとるだもんでもがくわけだよ。もやもやもやもやこうもがいて、竿先へ鈴がついとる。それを二メートルおきぐらいにずーっと刺しちゃって、こっちで一服しとるだいな。

--二十本ちゅうと多いなぁ

長いよ。ずーっと。ほうすると

「ガバッ、チリンチリンチリン!」

「それっ、上げてこい!」

 とこうして走っていって見るとウナギだとかナマズが、ナマズが多かったなあ、喰っついておるだ。どうかすると六十センチぐらいのこんなナマズが食いつきゃがる。

 それをさあ、網魚篭へ入れて生かしておいて、それからこんだあ今みたいにクーラーなんて無いらぁ、親父が箱へ入れて自転車に乗せてさ、そうするとおれは自転車乗れんもんで、おれは後ついて走って、ちゃっと(急いで)家へ持ってくるだ。

 そうだなあ、今の水道公園から家の前まで距離で言えば七~八百メートルぐらいあるのかなあ。で、帰ってきて、ナマズっちゅうのはねえウナギと違って割合すぐ死ぬんだよ。だから家で盥に水入れてさすぐ放すわけだ。そうするとでかいナマズがこんなふうにイゴイゴするらぁ、そうしたら近所に俺が回ってくるだい、ナマズいらんかねって言って。そうすると名古屋の辺の人はこの辺の人と違って川の魚食うからなあ、みんなもらいにくるわけ、そうするとやるんだけども。そりゃぁ良く釣れたで。

--ナマズのポカン釣りは?

 それだ、悲しいのが。こんだあ小川へしょっちゅう行くわけ。で小川でなあ、お昼になってチンチコチンに暑くなっちゃうとさすがにフナも一服しちゃって釣れんだよ。そうすると親父がこんだあ、長い竿つないでなあ、そりゃあ穂先だってこんな太い頑固な竿でなぁ、それへ凧糸を二メートルぐらい付けて、大きな丸いフトコロの広いこんな針を付けてなあ。そうしてそこらへ行って俺がカエル採ってくるとカエルのこんなやつを針に縛り付けてよう。こう藻があるら、この藻と空いておる所の間の境をなあ、こうやってなあいかにもカエルが跳んでおるようによう、ピチョピチョッ、ピチョピチョッとこうやっておるとよう、ナマズが出て来るのがわかるの!水がこう、ゆらゆらーとなって来るのが。

「来るぞー!」  なんて見ておるとなあ、ガバーッ!と喰うだ。そのガバーッがだよ、喰っつくんじゃねえだ、しっぽでなあそのカエルをはたき込むだ。そうしておいてこんだあ向きを変えてきて喰うんだよ。それを親父が説明してくれるんだけどおらぁ子どもだもんだいガバッと来るとうわぁって上げちゃうもんだい餌だけはたき取られてかかりゃあへん、ちゅうわけだ。

 けども親父はそこんとこ知っとるもんだいガバーッと来るとすーっと竿を水先まで下げちゃうわけだい、二メートルは。そうするとナマズは中でぐいっと飲む、こんだぁぐいっと合わせるともう後はどうもこうもへったくれもないゴボウ抜きよ。岸へほかし上げると俺が行ってはずすってなわけだ。

 大きくてなあ、これぐらい、四十五センチから上ばっかだったなあ。おーうこんなやつ!やっぱりなあそのナマズは近所の人たちが喜んでもらってくれるだよ。

 いろんなことがあったぜ。


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