父の釣り口伝

腕白たちの黄金時代 その15  止まってしまった水車小屋

 ある晩になあ、中原のお婆がよう、

「やい、肇。いい子だに一緒に行っとくれ。提灯もってなぁ、車屋へ米をついてあるで持ちにいかにゃあしょんねぇで」

 その車屋(水車小屋のこと、もちろん自動車販売店ではない)があったのは古戸の和兄ィ所の下の沢。あそこも昔は水があっただぞ、ダァーダァーと。あそこに中原の水車小屋があったんだ。そこへ提灯付けて行ってみたらよう、水車が止まっちゃっておるじゃないか。米やなにゃぁつけてはおりゃへん。

「おかしいなぁ?」

それからお婆が戻ってきてよう、

「肇、お前はここにおれよ。お婆は家に行っておじいを呼んでくるで」

そうしてお婆が行っちゃってから気がついただい。その日の昼間なあ、瀬干しをやらまいかって言って長兄ィや和兄ィ達を集めて

「小僧ンとう、家に行ってお蚕むしろを二、三枚ずつ持ってこい!」

 なんてガキ大将にはっぱかけられてあの沢の上でさ、中原の水車小屋へ行く水みちをせき止めちゃって、ウナギ捕ったりなんかしてさ、カツヨシの家で煮てもらって喰ってよう。元通りにしておけば水車小屋へ水が行っただが、そのなりで帰っちゃっただ。それから長四郎おじいが来てよう、

「そんなはずは無ぇ。水車が壊れるはずは無ぇよぅ」

なんて言って見てみたら

「なんだぁ!?水が来ておらんじゃねえか!」(笑)

それからおじいが提灯もって沢の上の方へだんだん見ていったら、

「やいっ!こんなことしたるぞ!誰ん達がやっただ?」

「俺ん達が瀬干しした」(笑)

また長兄ィが怒られて。(笑)

「明日もと通りにしておけっ!」

なんてさ。

 それであの時分は米が無いもんで麦を食わにゃあしょんねぇら。それだもんで麦なんちゅうもんはつきにくいもんで車屋が流行ってなぁ。みんな車屋を作りたいだが金が無くてできんもんだで、車屋持っておる人はみんなに貸しちゃあお金取ったりなんかしただよ。


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