釣行日誌 NZ編

真冬のバラ

2001/06/30 (SAT)

 今日で主な河川は禁漁となる。7、8、9月の3ヶ月間、産卵期の鱒を保護するために釣りはお預けとなるのだ。

 何本かの河川は、一年を通じて釣りをすることができる。今日出かけたスプリングクリークも、その一つだ。

 繊細なフライロッドとライン、小さなニンフの釣りもたまらなく面白いのだが、水面を流れるインジケーターの小さな変化に集中する気力が無いので、ズボラにスピニングの釣りを楽しむことにする。

 朝9時に家を出て、10時過ぎに川岸に立つ。チリチリと冷たい風が頬を刺してゆく。冬の本番が来たのだ。ワイカトの冬は、それほど厳しく冷え込むことはない。スターリングラードに較べれば、天国である。いわば、冬将軍ならぬ、冬伍長くらいかな。

 いくぶん水が濁っている今日のスプリングクリークは、水かさが増しているようだ。国道の橋から入り、しばらく牧場の柵沿いに歩き、最初の渡渉ポイントから竿を出す。いつもは対岸の深みの影からレインボーが出てくるはずなのだが、今日は反応がない。その上の淵でも流水は沈黙したまま。

 淵を越え、ストレートの早瀬を覗くと、30cm大の魚影が四方八方に走り去る。

『うへぇ。 冬の魚はシビアだわ.......』

 でかいドライフライ、陸棲昆虫のパターンに疑いなく喰いついてきた夏の鱒たちが懐かしい。

 いつも大きいのが居着いている、ポケットのような淵には、今日もいい型の鱒がゆらゆらと青い背中を見せていたが、スピナーが淵の上に落ちた途端にどこかへ消えてしまった。

『ン? お呼びでない。コリャまた悪うございましたァ......』

 まぁ、あそこはフライでも釣れないポイントだし。(笑) と、自分に言い訳をする。実は、今日のこの区間はこれまでルアーで攻めたことが無いのだ。

 下流から投げたスピナーが、よろよろと回転して鱒たちを誘うはずなのだが、通過速度が速すぎるのか、いっこうに反応がない。

『アプローチが悪いのかな?』

 天気は申し分なく、青空と白い雲、牧場の草には朝露が輝く。散歩がてら上流の橋まで歩き、そこから下流に向かって釣り下ることにする。

 3月に、ビアトリスさん、ヴィクターさんといっしょにイイ思いをした大淵を通り過ぎるとき、淵の尻に大きな黒い影が張り付いているのが見えた。ここから見てあの大きさなら、まず50cmはあるだろう。今日の本命クラスだ。あとでじっくり攻めよう。

 どんづまりの橋の下で、柵にもたれてランチを食べる。今日はサンドイッチとジュース。何の変哲もない、ただのサンドイッチがとても美味しい。

 お腹が一杯になったところで、ルアーをルブレックスに変え、上流から対岸の下流を探る。投げたスピナーをリーリングせずに保持し、流れのままにこちら岸まで泳がせるという極めて単純な釣り方である。

 水流の力を受けて回るスピナーに、時折り、カッンと小さなアタリがある。虹鱒の2年仔が突っついているのだろう。続いている二つの淵では何の反応もなかった。三つ目の淵で、カッンがゴクンに変わり、次いで派手なジャンプが水を割った。青い水の中から、虹の帯のほとんどない、まるでヤマメのような虹鱒が姿を現した。慎重にネットで掬い上げる。周囲の風景さえ無ければ、東北の川のヤマメと言っても通用するだろう。東北の6月、緑萌える6月が懐かしかった。

 通称、ヴィクターの大淵では、アプローチに細心の注意を払い、牧場の柵をはるか遠くでくぐり抜け、水際を静かに歩いてキャストできる最短の位置まで近づく。

 スピナーが淵の尻に落ち、回転を始め、川幅をゆっくりと横切ってくる。さっき見た大物のいたあたりを通過する。

「???」

 こつんとした感触はあったものの、しっかり喰わなかったようだ。太陽は真正面、おまけに腰を降ろしてキャストしているので、水面の反射でまったく魚の様子が見えない。

 第二投目、もう少し下流側の弛みを狙う。

「ピシャン、ブルルルルルル、ゴンっ!」

 さっきの青い虹鱒とはうって変わり、黒ずんだ体側と、バラ色の頬をしたレインボートラウトが浅瀬を疾駆する。しかし、すでに産卵を済ませたのか、長くファイトするスタミナはなく、すんなりネットに収まった。

 いかなバラ園でも、これほどの紅いバラは見られないであろう。水の中に消えて行く鱒を見送り、ネットの水気を払う。

 濡れたネットは心地よい。

 さらに釣り下り、二本目の橋の下でたくさんのちびっ子を釣る。中にはフックを大きくくわえ込んでいるのもいた。フライフィッシングに較べ、どうしても

「荒っぽい」

 感がある。もしくは

「乱暴」

 というイメージである。何尾か小さいのを釣って、もう十分満足している自分に気が付く。今日はこれでやめよう。思い出しながら数えてみると、7尾釣っていた。腕はともかく、気分は、芦澤一洋さんに少しだけ近づいているのかもしれない。

 それとも、トシのせいか? 枯れるにはまだ早いのでは?(笑)


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