父の釣り口伝

肇の魚釣り初め その18  ドジョウ掘りやらカモ釣りやら

 あれも面白かったなぁ、ドジョウ掘るだい。田んぼの水を落としちゃうらぁ、すると田んぼだとかそのまた枝の水路、幅が一メートルかそこらで深さが水がある時で三十センチぐらいの。泥だらぁ下は。それがなぁどうかいうそのォレベルの具合でなぁちょっと水がいつまでも干ん所があるンだよな。そうすると魚はよく知ってやがって、しまいには乾いちゃうんだよ水を干しちゃうから、そこへ集まっちゃうわけだどうしても。こうへこんだ所へ。

 そういう所を覚えておいて、冬になってそこが乾いちゃって、まあ簡単に言えばはだしで入ってもそこが濡れないぐらいに乾いちゃった頃に百姓家へ行って備中鍬借りてきてさ、ほいで進ンたちを連れてっておれがこう耕しては掘るだ。

 そうすると深さ四十センチぐらい掘ると、うまく行くとだよドジョウばっかこんなにソフトボールほども固まっておるだよ。そうでなくてもなぁ、泥を掘るとドジョウが出る、拾う、入れる、こうやってやるだけど、うまく行くと一掘りでドジョウがごっそーっと捕れるだよ。それを捕ってきて、冬だからドジョウはしぶとい死にゃあへんらぁ、篭に入れて水も入れずに持ってきて、こんだあ盥へほかり込んで。

 そうするとおばあちゃんがなぁとんがらしのこんなやつをなあ、二本ぐらいなあ、手で揉んで入れるだ、そうすると辛いらあ、するとドジョウたまらんもんだい吐いたりウンチしたりして腹ン中のもの出しちゃうわけよ。そうしてからそれを煮るわけよ。あれもうまいで冬のドジョウは、油が乗っとって。

 それから魚釣りじゃないけど面白いのがカモ釣り。冬になるとカモが来るら、庄内川や新川の岸でちょっと掘れ込んだような湾になったところで木がかぶったような所へ来てすくんどるんだ。(身をすくめているんだ)

 それへなぁタコ糸持って行って、ふて針の針付けて、さっき言うドジョウを付けて、餌にしてなぁ木の枝に縛って置くだい。そうするとカモが喰やがってなぁ、それがなぁ今思えばなぁ俺そう思うだよ、今のようなナイロンの糸がありゃぁよう、全部カモ捕ってやっただけども、タコ糸のおかしなようなもんじゃあカモ大きいらあ、バタバターッってやるとなぁ半分くらいは糸切って逃げるんだ。ほいだけどうまくいくとカモ捕れるんだよ。

 それがお前ちょうど昭和十九年ぐらいか、俺がこっち越して来る時分だよ。あの食用ガエル事件にも笑ったなぁ。新聞にまで出ただもんで。

--どんなことだったの?

 それがな、あの時分新愛知新聞ってあっただがな、それと名古屋新聞ちゅうのがあってそれが合併して中日新聞になっただ。

 その新聞になあ、夜な夜な中村方面でなあ、怪物が出るっちゅう、日暮れ方に吼えるっちゅうわけだ。そんなばかナって言っとったところが、いやおれも聞いた、俺も聞いたって人が出てきて。そうしたところが確かになぁ、日が暮れてくると確かになあ牛のような声で、

「モーウ、モーウ」

って吼えるんだ。そんなの何の声だって知りゃあへんもんでだれも。

「や、おるぞ!」

 っちゅうわけだ。で、どうもそれが中村公園の池が一番最初だっただ。だから女、子どもは夜そんな所へいっちゃあいかん!ちゅうことになってさ。青年団と消防が夜警をするちゅうことになってよ。

 だんだんだんだんそうして警備したところがいくら消防がおったって鳴きゃあがる、っていうわけだ。ほれからお前、新聞社まで来ちゃってしたところが、どうも電気や松明で見たところがでっけえカエルがおってさぁ、あれだっちゅうことになっちゃってよう、おかしいじゃねえかってわけで新聞社が調査を始めたら、だれかがその食用ガエルをな、養殖した池から逃げ出して、それだっちゅうわけだ。なーんだカエルかってそれで一件落着したんだけども、繁殖力が強いもんであれよあれよちゅう間に増えてきたわけだよ。

 そのうちにこんだぁ、ありゃあ捕って養殖場へ持って行けば買ってくれるちゅう話になってよ、さあみんなが捕らぁと思うだがなかなか捕れんわけ。で夜だもんだで釣らあと思って行っても電気点けたりすると逃げちゃうしさ。ところが俺ンたあこっすいもんでよう(ずる賢いから)ふて針(置き針)でどうだっちゅうことになってよう、例のお寺の小僧と公園そばだもんだい、ふて針やってなあ、よく捕っては売ったよ。


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