巨大鱒に魅入られてニュージーランド暮らし
(日本人フィッシングガイドの快楽と憂鬱)

 2001年7月、ニュージーランド北島ツランギにお住まいの斉藤完治さんの初の著書である「巨大鱒に魅入られてニュージーランド暮らし(日本人フィッシングガイドの快楽と憂鬱)」がつり人社から出版された。

巨大鱒に魅入られてニュージーランド暮らし

巨大鱒に魅入られてニュージーランド暮らし
画像は斉藤さんのサイトより引用

 以下は、この本についての感想である。

  1. 何よりもまずこの本は、ニュージーランドにおけるトラウトフィッシングやソルトウォーター・フライフィッシングの優れたガイドブックとして読むことができる。NZ独特の釣りのヒント、釣り場の探し方、農場主、地主さんたちとのコンタクトの方法、魚が居るかどうかのチェック方法、鱒がフライを咥える時の状態、バーブレスフックの使用について、合わせのコツ、フライフィッシングの初心者に立ちはだかる壁、さらにはスポーツとしてのフライフィッシングの考察まで、非常に得るものの多い本である。これからニュージーランド釣行を考えている人にとっては必読の1冊である。
  2. 次に、この本は、一人の青年が異国で味わった喜びと苦しみ、悲哀を見事に表現している優れた青春文学でもある。フィッシングガイドならではの喜び:釣りの面白い所を独り占めできること。はたまた様々なお客さんたちをガイドした時の苦労話の数々が率直に綴られている。特に印象深かったのは、ヘリフィッシングにおけるエピソードや、思わず激怒してしまったあるお客さんの言動などである。
  3. 一方で、当時は珍しかった日本人ガイドとして経験した「様々な業界」のウラ話が書かれていることである。メディアに良く登場していた有名アングラーの真の実力、無名だけれども実力は折り紙付きの市井の釣り人、名の通ったアングラーが要望した、あまり意味の無い釣りのシチュエーションなど....。実に面白かった。
  4. この本は、斉藤氏の処女作であるのだが、とてもよく考えられた構成と、お人柄がにじみ出ている語り口、読みやすい文体で、とても容易に読み進めることができた。もう発行されてから20年近く経つのだけれども、日本の釣り文学の中で、確固たる地位に置かれるべき不朽の名作だと思う。
2020/03/08

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