釣行日誌 NZ編

ストリーマーの興奮

2002/06/16 (SUN)

 日曜日の昼食をすますと、なんとなく日が射してきたのでいそいそとスプリングクリークへ出かける。冬の最中のワイカト地方は雨が多い天気が続いており、ちょっとでも晴れ間が見えるとそれだけで嬉しくなるのだ。

 車の多い1号線を南に下り、いつものゴルフ場まで来るとあたりは黒雲に覆われている。すぐにポツポツと大粒の雨が降り出し、とても釣りをする気分にはならない。さすがに客のいないゴルフ場の並木の下に車を止め、しばし休憩。

 20分ほどラジオを聴いていると、黒雲の一団は南東の方角へ去って行き、ふたたび薄日が射してきた。着替えをして、キャプテンさんの農場から入ることにする。夏頃、キャプテンさんが、この牧場を売って、他の土地へ移っていくと言っていたので、もう牧場主が違う人になっているのかも知れない。家に声を掛けてみたものの、人影がなかったので、そのまま川へと歩いてゆく。

 牧場の高台から流れを見下ろすと、こころなしか濁っている。今日の雨で周辺の牧草地から茶色に濁った泥水が入ってきているせいであろう。今日はストリーマーで釣ると決めていたので、ここから釣り上がるか、上流までいったん歩いてから釣り下がって来るか、ちょっと迷ったが、また雨になってもつまらないのですぐ釣り始める。

 ロッドとリールをセットして、いざストリーマーを結ぼうかと思ってフライケースを開けると、99年のクリスマスに、ホキティカのブリントさんの家で、教えてもらいながら巻いた黒のウーリーバガーが一本しかない。

「うわ、こりゃ大事に使わなきゃ」

 いつも魚が付いている場所はだいたい決まっているので、今日は草むらが中州になっているポイントから振り込む。中州の裏に黒いストリーマーが落ち、ちょっと流してから深みの開きを扇形に引いてくる。薄く濁った流れの中で黒いフライが小刻みに揺れながら泳いでおり、いかにも釣れそうな雰囲気ではある。

 ではあるが、なぜかこのポイントではあたりが無く、5歩ほど下がってもう少し対岸よりを攻めてみる。流れ出しのあたりにフライが達した時点でチョコン、ピクンとラインに小さなショックが感じられるが、どうもちびっ子レインボーらしい。大きなウーリーバガーを喰いきれないのだ。ちびっ子はちょっとな......と遠慮しつつ、もう数歩あゆみ出して奥を探ると、草むらに当たった流れが乱れているあたりでググッと重くなった。

『いっちょう上がりっ』

 瀬の中をギラギラと反転しながら30cmほどの鱒がラインを引き絞る。大事に寄せながら、こちら岸の弛みに誘導する。無事にランディング。一日の最初の1尾は何よりうれしい。

 この1尾を釣ったポイントで、続けざまにもう3尾を釣り、けっこう慌ただしくなる。この川でルアーとかストリーマーの釣りをすると、型こそ30cm級だが、魚の数が多いので、なかなか忙しいことになる。

 さらに数歩川を下り、右岸に主流がぶつかりその上に藪が覆い被さっているポイントを狙う。ここも鱒が居着いている場所だ。斜め下流にストリーマーを投げ、そのまま保持していると、流れにラインが運ばれて、めぼしいポイントをゆっくり横切っていく。自分の位置から藪の下まで、ほとんどラインが一直線になったあたりでゴツンと重いアタリがあり、遠くの水面下でギュラギュラと銀色が光る。

『あっけっこう良い型だ!』

 と思ってファイトに入ったが、あっけなくバレてしまう。掛かりが浅かったらしい。ラインが張りすぎている時に喰われると、どうもバラしが多いようだ。この対処法は如何に?

 ここから先は、川通しに降りられないので、中州のポイントの上流を狙う。古い丸太の水制工が沈んでいる淀みまで歩いて行き、そこから釣り下る。キャストして扇形のリトリーブ、5歩下ってその繰り返しである。中州の上流が深みになっており、そのまた少し上がほんのちょっとした瀬ができている。そこにストリーマーを通すと、黒いフライの後ろにモワモワッと波紋が立つ。

『あぁ、居る居る。あそこか』

 最初の流しでは喰いつき損ねたようなので、まったく同じラインでもう一度流す。キャスト、リトリーブ、瀬の中に入るフライ、ガツン。元気一杯の30cmが水面に飛び出す。この釣り方は、いつも下流を向いているので、鱒の重みがすべて速い流れで倍加され、このぐらいの鱒でもけっこうな力で戦わなければならない。

 とはいえ、使って使って縮まってしまったリーダーの、ごく太いところにフライを結んであるので切れる恐れはない。やや強引に引き抜く。青白く光る鱗が美しい。

 さらにもう1区間上流に歩き、水制工の上流にできている深みを狙う。雨がしとしと降り始め、薄暗い雲の下で寒さをこらえながら釣る冬のストリーマーは、陽光あふれる夏のドライフライとはまったく別の印象を与える。同じ川の同じポイントを釣っていても。

 水制の丸太の上を流してくると、突然水面を割って鱒がジャンプする。全身を水面上に出し、ストリーマーを襲う。

『うわっ!』

 何が彼らをあそこまで駆り立てるのかわからないが、スピナーやスプーンで攻めているとき以上に鱒は興奮するようだ。最初の一撃では喰い損ねたものの、あれだけ喰い気があれば、まずはいただき。

 キャスト、ドリフト、ちょっとアクション、ごっつーん。

 同じようにフライに喰いつくのでも、ドライフライやニンフの場合は、ヒットから始まるファイトが比較的静かに始まるのに対して、ストリーマーの場合、ヒット以前から鱒たちは興奮モードに突入しているようだ。熱狂的にストリーマーを追いかけ、食らい付き、流れに乗って猛然とファイトを始める。

 丸太にラインを絡めないよう注意しながら鱒について下流へ歩き、中州の深みまで走られたところでようやく力つきた雄をネットですくう。銀白の35cm。体高のある精悍な雄であった。

 その後は、大淵のアタマで虎の子のウーリーバガーを柳の枝に引っかけてなくしたのがたたり、ヒットのないまま終わった。しかし、30cmクラスを大小合わせて10尾以上釣れたので良しとしよう。ツが抜けたのは久しぶりだし。


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