父の釣り口伝

アメノウオ一代 その20  アメノウオの料理法

--アメの料理方法は?

 料理方法か、そりゃまあ一番無難なのは塩焼きだな。うん。それも炭で焼かなきゃならん、絶対に。

 いくら板前さんが今のレンジは良いなんて言ったってありゃうそだ。そりゃあ炭で焼かにゃあいかん。強火の遠火で焦がさんように火が通るっていう風な焼き方で焼かにゃ。まあ一番それが旨いわ。それでまあ山菜のな春ならセリだとか、そういうものを添えて。

 それとねえ、アメノウオは珍しい魚で、そうとう大きなやつでも上手に煮さえすれば骨も頭も苦にならん(気にしないで)だよあの魚は。

 そういうことがあるもんで、昔の人は生活の知恵で言ったと思うが、妊産婦にアメノウオを喰わせよっちゅうことを盛んに言っただ。

 で俺が釣って他の人にあげるとよくお礼を言われたもんだけど。だからカルシウムをとれるっていうことでそう昔のひとが言ったんじゃないかと現代の俺は判断するんだけど。昔はとにかく妊産婦にアメノウオを喰わせろと言ったよ。

--ふーん、そういう言われがあったか。

 うん、だからおらよくアメを炙ってひとにやったよ。それとああいうさかなだもんだで、なんていったらいいだなぁ、煮るっていうことはあまり向いてないな。生で煮ても、炙って煮てもよっぽど大事にしないと身がぽろぽろぽろぽろ砕けちまって。

--アメ茶漬けも上手にやらんとぽろぽろになっちゃうもんね。

 それで、次は今言ったアメノウオのお茶漬けだな。

 お茶漬けをやるときの要領は、番茶を煮出して、番茶がなけにゃあ普通のお茶でいいんだけど、お茶の濃さがちょっとこのお茶薄かねえかっていうぐらいに煮出して、それで煮るだ。ほいで味つけちゃあいかんの。ことことコットコット、土鍋で。弱火でおんなじ火加減で、ことこと30分でも一時間でも煮出して、箸でさわってみてアメノウオがやわらかくなったところでぇ、味をつけるだ。

 先にたまりやああいうもの入れちゃってはダメ。それはまあさかな類とくにそうだけどアメノウオは特にそう。柔らかくなるまで煮ておいて味をつけにゃあ。

--どういうふうに味付ける?

 まず、しょうゆとみりんと半々ぐらい、それにアメ茶漬けの場合は、キザラっていう砂糖、粒の四角い、あれがいいわ。それからそれがなけにゃあ氷砂糖。普通の城砂糖は灰汁が強くていかん。それで、甘くちゃあいかんだ、アメ茶漬けっていうやつは、おかしなやつで。あま塩っぱくなけにゃあ。そのあま塩っぱい加減がなんともいいようがないんだけども、あま塩っぱくなけにゃあいかん。

 甘くてはただの佃煮にお茶かけて喰っておるだけのもんになっちゃうで。だからできればお母ちゃんがつくったようなああいう自家製しょうゆがいいだよ。色が付かずに味が付くで。いまのしょうゆはすぐに黒く色が付いちゃうでいかん、今日のすき焼きみたいに。ま、それがいちばんいいな。

 次には、山なんかで釣っておって今日はお昼に焼いて喰わめぇかって言ったらさあ、あのアルミホイルを持ってくといいだい。ホイル持っていって、魚の腹割いて、塩を振って包むだ。でそんときにウドかみょうがでもでておればそれをちょっときざんで包んで、で砂の中に10センチぐらい埋めて、すこしの間ガンガンひを焚けばさあ、とれもうまく焼けるに。

 そりゃ火でよくみんなみたいにアウトドアだなんて言って竹ん棒に刺して焼いとるもんでうまく焼けんだい。そうだらあ、焚き火の火だもんだいそばへ寄れば焦げちゃう、遠くになりゃあ焼けりゃあへんちゅうことで。俺ン達は昔はホイルは無ェもんだで蕗の葉っぱで埋けて焼いたよ。うまく焼けるぞ。それで味噌持っていって。味噌なら腐りはせんし。

--よく釣りの本を見ると土手焼きをやるっていうじゃん、あれはやったことある?  あるよ、石でだらぁ。

 それをなあ、知らん人たちはみんなやり損なうだ。なぜかっていうと焼いてはぜる(破裂する)石だかはぜん石だかの区別がつかんだ。あぶねえだ、あれ。

 あのせんべいみたいにはぜてくる石なんか危なくてそばにおられんぞ。こうへげて(裂けて)薄い剃刀みたいな石が飛びゃがって。青いようなこんなような石の硬いようなやつがあるら、あれ。あれがあんがい平たいようなやつがあるもんであれがいいなんて火を焚くとそりゃあ危ない。

 それで土手焼きはねえ、砂を固めたような砂岩ちゅうか、ジャラジャラっぽい石の方がいいんだ、火を焚くには。それで温まってしまえば石が厚くたってなんだって焼けるでいいで、板みたいに薄くなくても。それでうまく焼けるよ。石で焼けば焦げないこに焼けらあ、味噌でなあ。味噌が一番だよ、山へ持ってく時には。おら、缶詰のカンを鍋にしてよく山菜採っては煮て喰ったもんだ。いまはいいわい、いい飯ごうなり何なりあるもんだい。


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