父の釣り口伝

腕白たちの黄金時代 その2  松明とアカブト

 そうかと思えばこれはまあ、雑魚釣りではないんだけど、夏に夕涼みがてらさあ、ガキ大将が先に立って行って、家から唐ぐわ持って来てさ、松の木の根っこを堀りに行くだ、松明だ。

 それを家から鉈持ってきたり鋸持って来たりして打ち割ってさ、松明をこしらうわけだよ。そいでな、岸辺に砂掘って両側を石積んできちーんとしてなあ、堀り込みの池を作るわけだ。それは砂砂利混じりの所が良くて、狭い水路の幅が五十センチぐらい、丸い池の直径が六十センチ、深さが二十センチぐらいに作るわけだ。そうして池の端で鉄棒組んで松明を燃やすんだ、その高さが一メートルぐらいかな。そうやって小僧達が段取りして火を焚くんだ。

 で、池の中へ、蚕網の目が五ミリぐらいのやつを二枚縛ってから沈めるわけだ。それでみんなして待っておるだ。そうするとなあ、ジンゴ・サスロウ・カジカなんかが松明の明かりに誘われて池へ入ってくるだ。

 でもって、ええかげん魚が入ったところで水路の入り口に木の板をあてがって、それと同時に網を上げると、うまくいくと両手に一杯ほども魚が入るだい。それをバケツに開けといてまた板をはずして網を沈めて再度始めるだい。そうだなあ、三晩四晩は続けて入るなあ。その近辺の魚はみんな入ってしまう。しまいに入らんくなるとまた別の場所へ行ってやるんだ。他に遊ぶことは無いだもんでそれを仕事にやるだい。

 そうせるとどうだ、一週間もやると魚ばっかり雑巾バケツに一杯ぐらい捕るぞ。それを煮てもらって食うだい。今じゃあ、そんなことやろうと思ってもジンゴがおりゃへんもん。昔はジンゴだってこんなに大きなやつが捕れただがなあ、そりゃ旧き良き時代だったぞ。

(注:ジンゴというのは、ヨシノボリというハゼに似た淡水魚の地方名です)

 そうして松明炊いておると、どうかしてウナギが来るだよ。うれしくてなあ。あんな蚕網なんてただの平べったいもんだらぁ、ただ上げたじゃあ逃げちゃうだもんで岸へウナギを跳ね上げてさあ、みんなでぶったたくだよ。ニョーロニョロって入って来るんだ。

--ウナギも明るい方へ来るのかなあ?

 いや、それが魚につられて来るんだい。ウナギは暗いところしかおらん魚だもん。ジンゴやカジカがぞろぞろ動くもんだい、それにつられてついて来るんだと思うよ。あれは結構捕れたに。

 それとなあ、こんだあ夕方になるとなあ、お蚕網を家から盗んできてなあ、ホタルをはたき落としてよう、殺さんように腰篭の中に入れちゃあよう、そうして水をかけて明くる日まで死なないようにとって置くだい。

 それから夕方になるとみんなで例の竹の竿を担いで川へ行ってさ、そのホタルを死なない程度に針にピッと刺してさ、そーっと流すとなあ、ピッカ、ピッカ、ピッカ、バクッ!って大きいのが食いついてなあ。うれしくてなあ。今なら電気浮きさ。(笑)

 光が消えたらそれっと竿上げると魚が喰っておる。(笑)


父の釣り口伝   目次へ

サイトマップ

ホームへ

お問い合わせ

↑ TOP