君よ知るや南の国

南ワイカトのスプリングクリークにて(1)

 皆様、こんにちは。ニュージーランドはハミルトンからお届けします「君よ知るや南の国」です。 ハミルトンは二、三日前に秋空らしい高い鱗雲が見られましたが、今日はまた暑い夏らしい日和でした。

 今回は、スプリングクリークの鱒釣りを日記形式でお届けします。

2001年1月14日 南ワイカトのスプリングクリークにて(1)

 午後遅く、釣友のN君といつものスプリングクリークに向かう。国道脇に車を止めると午後5時、まだ日は高い。N君はスピニングロッドを支度して今日はルアーで勝負とのこと。私は思うところあってフライロッドとリールを持つ。

 牧場の中を通っている農道のゲートを越え、牧草地とトウモロコシ畑を横切り、下流側へ歩くこと15分、いつものカーブに着いた。途中で買ってきたサンドイッチとジュースで腹ごしらえをする。わずか10分ほど川岸で座っているだけだが、増水気味の水面の様子、水生昆虫の羽化の有無、川底の藻の生え方など、釣りに夢中になっているときには気付きにくい、いくつかの事柄が見えてくる。お腹もいっぱいになるし、落ち着けるし、釣り始める前の川辺での休憩は、よい釣果をもたらしてくれると思う。

 支度の出来ていたN君が、すぐ足元の深みと曲がりっぱなの淵をスプーンで探る。いくつか良い型の魚影が走ったようだがルアーに食いつくまでには至らなかったそうだ。彼はそこを渡って下流に向かう。昨年の暮れに大物を目撃した瀬は、彼が気を利かして譲ってくれたので、慎重に狙うこととする。真夏の日中で、水生昆虫の羽化はほとんど見られない。大物の虹鱒の好きそうな大きめのカディス(トビケラ)を模したフライを結ぶ。

 左カーブの淵から流れ出しているその瀬は、なんということの無い瀬なのだが、ちょっとした流木が沈んでおりその下流側がわずかな深みになっているのである。岸辺の藻の中に慎重に足を踏み入れ、姿勢を低くして近づき、流木の背面を探る。カディスのフライは白く大きめで見やすいので楽である。春先には小さめの茶褐色のフライが当たっていたのだが、季節の変化と共に当たりフライも移り変わってゆくようである。

 流木の真後ろ、左右を流したものの反応がない。対岸にもわずかな深みがあるようなのでそこを流していると、黒い鼻先がモッコリ現れてフライをくわえた。モコリっ、・・、ピシッというぐらいのタイミングで合わせたのだが、なぜかすっぽ抜けた。

『あっれーっ? 何で今のタイミングで合わない.....?』

 鼻先の大きさと、ゆっくりした出方から、そこそこの鱒だなぁと思ってワクワクしながら、さっき出たポイントを探る。反応は無い。

『むむむ? さっきはハリに掛かっていないはずだから、まだその辺にいるはずだが....』

 と幾筋か流した後で、件の深みの始まり辺りにカディスを落とすと、こんどは鼻先から背中まで露わにして鱒が毛針をくわえて潜った。

・・・ピシッ!

 ぐんっと重みが竿に載り、いきなりのジャンプが始まる。

『おっ! やったね! 幸先いいぞっ!』

 と余分なラインをリールに巻き込み、竿を高く上げてやりとりをし出したところで再度ジャンプした鱒が、あっけなくフライを吐き出した。

『ガーン..................』

 むむむむ、なんてことだ。いささかハリがかりが浅かったらしい。35cmほどの虹鱒だったが綺麗な魚体をしていた。35~45cmぐらいの虹鱒はひときわ高くジャンプして、非常に速いスピードで頭を左右に振るので、よほどしっかりフックが刺さっていないと外されることが多い。フライはまだいいが、ルアーで釣る場合、5回に4回ぐらいは最初のジャンプで外されてしまう。

『まぁ、ドライフライで完璧に出てくれたのだからよしとするか....』

 と言い訳と強がりを飲み込んで、再度、流木のポイントを攻めることとする。よく見ると、流木の上流側に、半円形で擂り鉢状の深みができており、細かい砂が積もっている。普通の川底は、砂利がほとんどなのだが、流速のゆるいこうした障害物回りの深みには、白い砂が残されて堆積しているようだ。

 と。

 その白い砂の上に、けっこうな大きさの影が揺らめいている。鱒である。先ほどの鱒よりは大きそうだ。水深は30cmあまり。水は澄んでいるし、あの深さなら文句無く水面を流れる毛針に反応するであろう。

 振り込んだ白いカディスが水面に落ち、影の真上を通り過ぎる。再度、再々度。揺らめいている影は、まったくフライに反応しない。

『ははぁ.....増水気味だから、ニンフにしか目がいってないな...』

 そんなに極端に増水しているわけではないが、数日前の雨の影響で、若干水かさが増えている。その鱒は、水中を流れてくる水生昆虫の幼虫を今日の献立にしているようである。だいたい同じ位置に定位しているのだが、時折、左右にすばやく移動して何かを捕食している。

 「できた」フライフィッシャーマンなら、ここでやおら水生昆虫を捕獲するためのネットなどを取り出して虫の観察を始めるところであろうが、煩悩あふれる私としては、いつものニンフ、しっかりオモリを巻いたフェザントテールの12番を即座に結ぶしか手が無いのである。

 さて、これでニンフは結べたのだが、気を付けるべきはキャストの距離である。鱒は浅いところに定位しているので、ついつい投げすぎてリーダーの太い部分や色つきのフライラインが目に入るとやっこさんは一目散に深みに逃げてしまうのである。しかし、鉛線を巻き込んだニンフが鱒の鼻先まで沈む距離だけは上流に落とさねばならない。

一投目、位置は良いが少し下流過ぎた。鱒の目に触れる前にニンフが流れ去ってしまった。

二投目、距離はバッチリ、しかしコースが悪い。鱒の定位している筋を40cmほど外した。

三投目、やや右に外れたものの、ドンぴしゃの距離にニンフが落ち、頭の中で思い描いたニンフの軌跡が鱒の影に達したところで、魚影が右に動いて定位置に戻る。

ピシッ、ギュンッ、バシャーン!

 と、いつものごとく派手なファイトが始まる。(次回に続く)


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