コラム
サヨナラからが人生だ : 淀川長治氏を悼む
大きく息を吸い込んで、淀川さんは最後のサヨナラを声に出した。最後の力を振り絞って。
私が4歳の時に始まったテレビの映画劇場の解説を、今日まで一度も休むことなく続けられてきた淀川さんが、先日亡くなられた。享年89才であった。
今日はその追悼特別番組として、30分の特別番組が放映された。その中では、淀川さんとチャップリンとの出会い、ハリウッドでのスター達とのインタビュー、来日した有名俳優との会談、北野武監督との対談、若者達への公演、そして、最後となった「ラストマン・スタンディング」の収録の様子などが放映された。
最後の言葉は、
「もっと映画を見なさい」
であったと言う。
映画を感じること、映画を愛すること、人を愛すること.....多くのことをテレビの解説や著書から教えていただいた。
また、淀川さんの生涯を想うとき、人生の素晴らしさを実感することが出来る。
淀川さんの年齢まで、私はまだ53年も生きることができる。
淀川さんの渾身の一言である「サヨナラ」から、私の人生を始めよう。
1998/11/15