コラム
ワイカト地方を疾駆する熟練の技
先日、ハミルトン~ケンブリッジ間のステートハイウェイ1号線を車で走っていると、先行車のドライバーが、丸めた紙を次から次へと捨てているのを見かけた。
「非常識な人だなぁ.....」
と思って見ていたが、その人物がゴミ捨てをやめる気配はない。と、よく見ていると、彼が紙を捨てる場所は、国道沿いに立っている、各家々の郵便ポストのある場所と一致しているのである。さらに、車のリヤウィンドウには、この辺の有力地方紙であるワイカト○○○○というステッカーが。
その車は新聞を配達していたのであった。
時速90キロ近くで走行している車から、助手席の箱に入れてある新聞(丸めて透明フィルムを被せてある)を掴み(時には3軒分)、窓から腕を出して肘と手首のスナップだけで左側の郵便ポスト「付近」に投げてゆくというのは、並大抵の技術ではできまい。
彼の手から放たれた新聞は、見事にポストの周囲:半径約2m以内に着地してゆく。さらに驚くべきコトに、左側のポストのみならず、対向車線を挟んだ右側のポストにも、迫り来る対向車を巧みに避けつつ投げつけているのである。中には新聞を取っていない家もあるはずなので、その新聞配達人の記憶力の良さにも驚かされた。
しかし、いくら彼の熟練の技をもってしても、中には道路横の側溝に落ちて泥まるけになる新聞もあるはずなので、あのような配達方法を許している当地方の人々の懐の広さにも改めて感心した。
帰宅して、その一件をホストファミリーに話すと、ファンガレイに住んでいるホストマザーの弟さんは、16の時からその手の新聞配達を手伝い始め、18の時には技を極めて独立開業したそうである。