父の釣り口伝
肇の魚釣り初め その6 自分で創ったつなぎ竿
そういう事件があって、こんだあ俺は稼いだもんだで、竿を買おうと思っただよなあ。ほいで、今でも覚えておるよ。このぐらい(一メートルぐらい)を三本つないだやつを、釣り道具屋へ行って安いやつはないかと言ったら、十五銭であるちゅうもんで、それを二本買ってきたんだよ。そうしたらまた親父に怒られちゃってさ、
「子どもがつなぎ竿やなんかもってのほかだ」
ちゅうわけだ。
「返してこい!」
「おらそんな体裁悪いでやだ」
「ダメだ! おみなもついて行って返してこい。」
て言って、ほいで延べ竿買ってこいちゅうわけだ。でしょうがねえもんで返して、こんだあちょっといい十銭ぐらいの延べ竿を買ってきたところが、自転車で釣りに行くにしたって歩いて行くにしたって長くて持ちにくいわい。
なんとかこのうまい勘考は無いかと思って俺は考えた。ほいでも俺はなァ、自分で言うのも何だが頭ァ良かったと思うよ。ほいでこんどはなあ、こっちほうへちょっと行った所に横井さんちゅう人があってそこへ行くといろいろな道具があるんだよなあ。
で、そこへ竿をかついでいってさあ、この竿を半分に切ってくれって言っただ、その人に。そうしたらそのおじさんがさあ、そんなん切ってしまっちゃあダメじゃないかと言うもんでおれは考えただ。そん中へおれは芯を入れると。で一方は芯を、はい当時セメダインあったからなあ、セメダイン塗ったくって入れちゃって、もう一方は穴をちょっとゆるく削ってスポッと入れればつなげるだで、そうするつもりだで切っておくれって言ったらよう、
「坊は頭がいい、それはうまくいくかもしれんぞ」
っちゅうわけで横井のおじさんが切ってくれてさ、それからこんな太い竹を割ってそのおじさんが手伝ってくれて、丸く削ってギュッと入れて、でそこへ、笑っちゃうよなぁいまならこのビニールテープちゅういいもんがあるだが、当時おまえら知らんかなぁガムテープちゅうのがあったが。電気の絶縁用にな、幅も太さも今のと同じぐらいなんだが、木綿に何か黒いコールタールのようなものが付いておってそれをこう、割れんように卷いてくれて。さあこんだあこんなつなぎ竿ができたらァ、得意満面で行くわけだ、魚釣りに。いろんなことをやったぜ。そうして魚釣りを上手になったわけだ。