釣行日誌 NZ編  「5000マイルを越えて」

キャンプの夜の語らい

1997/01/14(TUE)-3

 松延さん達とビルが帰ってきて、夕食が始まった。今日の戦果を聞くと、松延さん夫妻は60cm以上のブラウントラウトを3尾ずつ!というすばらしい釣果であったとのこと。この事実は、私の疲労を3倍掛けぐらいにした。私の疲労はただの疲労。夫妻は鱒とのファイトに疲れた...という風情であり、うらやましいことしきりであった。2日続けて坊主! しかも10尾もの鱒を目前にしながら、である。サイトフィッシングの面白さの裏にある厳しさに直撃されてしまった私であった。

 ビルが段ボール箱から赤ワインの大瓶を取り出し、皆に振る舞ってくれた。デビッドのシチューとワインの効き目で体が芯から暖まってくる。

 夕食後、ビルは早々とテントに消え、デビッドと松延さん夫妻と私とで話が弾む。

 

 デビッドは今年39歳。モアナの町に家を持ち、夏の間だけガイドをして過ごし、冬は読書や物書きで過ごす。だからとても長い冬だよと言う。釣りシーズンは10月から3月までの6カ月間だけである。そんな生活もあるのだなあと感心する。

 釣りのことや趣味のことなどについてカタコトで意見を交わす。「リバーランズスルーイット」を見たかいと聞くと、

「ああ、グレイマウスの映画館で見た。とてもいい映画だったよ」

 私が、日本では原作が翻訳されておりそれも読んだと言うと、原作と映画は違っているのかと聞かれた。ほとんど同じであり、かなり忠実に映画化されていたと答える。私の父も釣りが得意であり、兄弟達もみな釣り人なのでことさらにあの映画は印象深かったよと話す。

 今度は「ピアノ・レッスン:原題 Piano」の話になる。主演女優のホリーハンターはすごく美しかったとか、あの子役の少女はすごいとか、ロケはニュージーランド北島の西海岸だと思うとか話した。このあいだ日本で見た、その少女が主演した映画「グース:原題 Fly away home」の話をすると、彼はまだ見ていなかったがその映画のことは知っていた。洋画の邦題と原題とは全く違う場合が多く、外国人と映画の話をすると共通の話題にたどり着くまでにひと苦労するのである。

 話はなんと宗教にも及び、お前の宗教は何かと聞かれたので

「Shintou」

 と答える。わが家は祖父の代に寺の住職とケンカして以来、神道なのである。日本のシントーは、最も古い宗教であり、山や大木、滝、大岩などなんにでも神が宿ると考えられているのだなどと、かなりアヤシイ知識をぶちまけて抽象的な題材についての困難な英会話を展開した。

 デビッドは、俺はここでキャンプをして、夕食の後でこうして焚き火のそばに座るのがなによりも好きなんだと話す。この時間はお金では買えないねと答える。

 やがて松延夫妻もテントに消え、二人だけでひっそりと話を続けた。30分ほど話した後で、デビッドがもう寝ようかと言うので眠ることにした。

 眠る前に、少し喉が乾いたので河原に降りて水を飲む。甘い味が喉をすべりおりてゆく。曇り空で、うっすらと明るい空の下、広い河原を少し歩いた。この川がどこまでも続いているような気がして、はるかかなたまで自由に広がっている気がして、とても幸福だった。


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