留学日誌

2001年 6月 ツバメ舞う真冬のダックポンド

6/11(MON)

 クラスメートのピーター君、ヒックス教授、技官のガヴィンさんといっしょに倉庫に行く。刺し網とファイクネットを取り出して、ピーター君の野外実験の結果をチェックするために、それぞれのネットの大きさを測定した。

 あまりにも良い天気、冬晴れの午後。研究室にいるにはもったいない。(笑)

6/12(TUE)

 PrincipleofSustainability:「持続可能性」の原理 のクラスで、グループ討議があった。12人の学生が二つに分かれ、一組が農場主、地主、となり、他方が地域住民の役割を演ずる。テーマは、住民から出された地域の真ん中にある湖周辺の多目的利用計画(水上スキー、散策、キャンプ、バードウォッチング等々)について、農業のために水資源を利用している牧場主・地主連合と、「持続可能な発展」が可能な合意にまで至れるかどうかを、双方の主張をすり合わせつつ、討論するのである。講師と担当の教授とが環境裁判所の役割を演ずるのであるが、学生同士の速い会話についていけず四苦八苦する。

 ニュージーランドの環境裁判については調べなくてはならない。

 午前と残りの午後は統計解析の宿題に追われる。

6/14(THU)

 一日レポートを書き続け、まだ終わらずに夜も研究室に行く。時間をとってゆっくり学べたら、こんな面白い宿題もないだろう。残念。

6/15(FRI)

 今日あるはずの501のクラスが休講だった。ラッキー! いそいそと統計の宿題の仕上げにかかる。

 昔と思えば統計解析ソフトの発展は著しいものがある。最初にデータを入力すればざくざくと結果が数表+グラフとなって出力される。それだけに、結果を理解する力を養わないと、トンデモナイ解釈をする危険がつきまとう。

 自分で、プログラミングをして(エクセルレベルでも)いるうちは、それなりに解析過程が見えるのだが、MiniTAB、とかSPSSだと、ほとんどブラックボックスになってしまう。用心用心。生態学を志す人は、統計に強くなる必要がある。

 夕方まで新しいソフトウェア、EndNoteをすこしいじってみた。これも便利なソフトである。感動。世の中には頭のいい人がいるもんだ。

6/16(SAT)

 久しぶりに、曇天の中、山岳渓流で鱒と遊ぶ。あるいは遊ばれる。よどんだ精神が澄み切ってゆくのが見える。

 オークランドのフィッシングクラブの秘書の方から電話。去年のキャスティング大会の優勝カップを返して欲しいとのこと。ガビーン。たしかに優勝はしたのだが、表彰式に出ていないので、カップはもらいそびれたのだ。 うーん、出ておくべきだった。持ち回りのカップなら、私の名前の入ったリボンでも付けてくれるのだろうか?

 以後、 無冠の帝王 と呼んで下さい。(笑)

 無冠ならまだいいが、無毛の中年となりそうで、コワイ。

6/17(SUN)

 朝、ボリュームたっぷりのキャベツ入り目玉焼きを作り、美味しくいただく。冬になってから食欲が旺盛である。弁当に、得意の海苔弁当を自作し、研究室へ。515コースの宿題、「グローバル、そしてローカルレベルでの、コミュニティの持続可能な発展のための施策」についてのレポートを書く。とはいってもまだ資料調べの段階。あと2週間でどこまでレベルを上げられるか?今度はがんばるぞ。

 疲れが出やすい、溜まりやすい。

 少年老いやすく、学成りがたし。

 人生が二度あれば。

 郷里の父に電話する。父の日のささやかなプレゼント。電話代向こう持ちだけど。(笑)

6/18(MON)

 午後、ジムといっしょにラグランのある人を訪ねる。その人は、ニュージーランドの在来魚であるココプの養殖に取り組んでいるとのこと。

 話をだんだん聞いていたら、もと政府機関に勤めていたミッチェル氏だと言うことがわかり感激した。氏の論文は、直接私の研究のルーツなのである。

6/19(TUE)

 朝は実験設備の計画、今後の予定の見直し。午後2時から、大学の池で、技官のGavinさんとファイクネットを仕掛ける。構内の池に棲息するウナギ、ナマズの生息密度と池の水質の関連を調べるのだ。餌は鱒の養殖用のペレット。果たして明日の朝、何尾掛かっているか?

 Gavinさんのお父さんは、背丈よりもちょっと小さいキングフィッシュを釣ったことがあるそうだ。また、Gavinさんは、20ノットでトローリングしていたルアーにカウワイが喰いつくところを見たことがあるそうだ。彼らの遊泳能力は素晴らしい。水中のミサイルと言える。

 3時から515の講義。ドイツ人の??講師が、エコ・ツーリズムについて面白い経験談を交えて説明してくれた。彼はツーリズム業界で、ガイド、オペレーターなど、様々な業種で働いてきたのだ。

 8月末には515の試験がある。むむむ。今度はいい点が取れるように頑張ろう。

 夜は、515のリポートを書く。筆が進まない。でもちょっとずつ形になってきた。いびつな形だが。(笑)

6/20,21(WED-THU)

 大学の池でナマズ(ニュージーランドでは外来魚)の調査をした。(詳しくは、後日、書きます。)

6/22(FRI)

 ただいま学期中間の試験休みなので、キャンパスに学生の姿は少ない。朝から研究室で、今後の実験・研究プランを練り直す。

 何時、何処で儚くなろうとも悔いの無いように生きよう。

 しかし、はかないって漢字で書くと、人の夢、なのである。悔しいなぁ。

6/23(TAT)

 朝から研究室で515のレポート。要領が悪くてちっとも進まない。しっかりと読み終えた文献のノートを取ること。順序よく、頭の中を整理しながら文章を書き進めること。論理の構成をきちんと、破綻の無いよう、未熟な穴の無いように組み立てること。

 午後、インターネットで日本の大学関連の資料を漁る。googleのサーチエンジンで、検索すべきドメインを .ac.jpに指定して、「魚道」というキーワードでウェブの海をさまよった。

 同じようにして、「Fishladder」という単語で、ドメインを.eduに指定して検索した。アメリカと日本の大学、彼我の実力差が如実に現れ興味深かった。

 研究そのものは言うまでもないが、まだまだ(多くの)日本の大学は、ウェブサイトの構成力が無い。そもそもインターネットの意味、威力を理解していないサイトが多いと思う。

 ただ英語版のページを作れば良いと言うものではない。(自戒を込めて)

 仮に、すべて日本語で記述されていたとしても、分野によっては、十分世界に通用するホームページは作れるであろう。日本語が堪能な研究者など、世界中にいくらでもいるのだから。ただ、その分野が極めて限定されるだろうが。

 国土交通省のHPを見ていたら、担当者の電話番号、内線番号、夜間直通番号まで載っていた。

 夜間直通は別にいいけど、メールアドレスを記載して欲しい。(笑)

6/24(SUN)

 515レポートの下書き。夜、本棚から「河川生態環境工学」を取り出して再読する。日本にも良い本があるものである。感謝。

6/26(TUE)

 午前中一杯かかって打ち合わせ資料づくり。午後は教授と実験計画の詳細を詰める。

 3時から、515の授業で 「マオリ族から見た持続可能な開発」 についての講義を受ける。日本人の祖先と共通な自然観を持っていることが分かり興味深い。環太平洋我らみな兄弟、か?

 それはそれとして、昔の「八紘一宇」、「大東亜共栄圏」は勘弁してほしかった。植民地支配の口実だったからなぁ。

 オレらも、未来の子孫たちから見たら、

昔はバカなことをやってたもんだ

 と笑われるのだろう。

 昼の弁当がやや少なくて空腹に襲われる午後5時半。疲れた。

6/29(FRI)

 向かいに座っているクリスティンさんが、研究室に息子さんを連れてきた。聞けば10歳とのこと。みたところティーンエイジャーと言っても通用するような彼女の息子さんとは、とても信じられない。姉弟と言えばみんな信じるだろう。

 学問はもちろんとして、私生活でも差を付けられたなァ。(笑)

6/30(SAT)

 朝起きてみると、雲一つない快晴。研究室へ行く予定を急遽変更して、スプリングクリークへ急ぐ。(笑)

 冬の最中、スピニングロッドでかわいい虹鱒と戯れる。

 午後、自動車のワイパーの修理。自転車のパンク修理。部屋の片づけ。多忙な土曜日だった。

6/31(SUN)

 パンクの直った自転車を駆って、またまた快晴の空の下、研究室へと馳せ参じる。日曜日は静かで勉強がはかどるのだ。朝靄に霞む大学の池の水面をツバメが飛んでいる。生まれたばかりのカモの雛がよちよちと泳いでいる。変な冬である。

 外来動物の駆除についての研究では、ニュージーランドにおける第一人者であるキング博士が、早朝から研究室でワープロを打っている。街ですれ違えば品のいい、気さくなおばちゃんとしか見えないのだが。

 ワイカト大学、(おそらくはニュージーランドの大学すべて)では、どの教授、先生方もきさくでフレンドリーである。学生はみんな、ジョンとかコンラッドとか、ファーストネームで先生を呼んでいる。

「ブレンダン!(ヒックス博士のファーストネーム) 昨日、スプリングクリークでいい型のレインボー釣ったよ。」

「おお! そうかっ! 今度1尾釣ってきてくれよ」

「いいですよ。 どうやって食べるんですか?」

「いや、耳石を顕微鏡で調べると毎年の成長速度が分かるし、含有物を分析すれば、その魚が海に下っていたかどうかがわかるんだ」

「ははぁ......」

 てな具合である。

 はや6月が終わる。2001年の半分が終わった。


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