父の釣り口伝
腕白たちの黄金時代 その11 お弔いの日にも雑魚を釣る
おう、こんな事もあったなぁ。
中原のおじいさんが死んでさ、弔いの日にさあ、俺達がそこらチョロチョロするもんだいよう、おばあがよう、
「この小僧達、どっか行って遊んでこい!まあうるさい!」
なんていったらよう、長兄ィがよう、
「やいどっか行けなんて、うちにおれば怒られるなんてばかなことはない、もう今の時期なら魚が釣れないかなぁ?」
と、こういう話になったわけだ。今でも覚えておる、三月八日だったよ。
「そうだなあ、もう釣れるかもしれんなあ。アメノウオなら釣れるぞ」
なんて言ったらさ、長兄ィがアメ釣りは川に入るのが冷たいでやだって言うんだ。
「じゃあ、どっかドン淵のでかい淵なら雑魚がたまっておるかもしれんで行かまいか。(行こうよ)」
ってなわけで俺と長兄ィと隣のふみと己典兄ィと四人で川行って探したらよう、お寺の真ん前の一つ下の淵が日当たりがいいもんで雑魚がたくさんかたまっておりゃがる。
「ようし!おるおる」
って言ってさ、長兄ィもガキ大将だもんでふみとみのり兄ィに川へ入ってエモ(クロカワムシのこと)を採れって言うんだ。(笑)
冷たくてどうならずいなぁ(かなわないわなぁ)三月八日だもんで。それでもガキ大将にいわれりゃぁしょうがない、二人が裸足になって川へ入ってエモを採る。それで俺と長兄ィが岩の上へ登って、雑魚をたくさん釣って、それから家へ持ってきて魚の腹をさばいておったらよう、おばあにどやされてなぁ、
「ばっか小僧ン達め、おじいの弔いの日に殺生なんかしやがってなんたら(何と言う)小僧達だ!」
結局しょうがないもんで魚はとなりの幸一兄ィの家にみなやってよう。笑っちゃうなぁ。