君よ知るや南の国
ラグラン港の日曜日、海の小物のサビキ釣り(2)
■ turigu.com通信 ■ [Vol.24] 2001.5.22 より
皆様、こんにちは。 ニュージーランド北島のハミルトンからお届けします「君よ知るや南の国」です。日本では新しい内閣への期待がかなり高まっているようですが、先日、全国紙であるニュージーランドヘラルドにも、小泉首相と田中外相の記事が、大きな顔写真入りで載っていました。
ハミルトンは、前線がいくつも通過する変わりやすい天候が続いています。冬場はいつも雨が多いのですが、今年は昨年よりも雨の訪れが早いようです。
さて、今回も、ラグラン港でのサビキ釣り(その2)をお届けいたします。
ルアーロッドから垂れている釣り糸の向こう側には、水面を波立たせながら餌をあさっている小魚の群れが見えます。そちらに向かってサビキを投げ、ピンコピンコとしゃくりながら引いてくると、コツンカツンと小さな当たりが感じられます。しかし、魚の口に比べ、サビキのハリが大きいのか、なかなか食いつくまでには至らないようです。桟橋に集まっている釣り人の中には、けっこうな大きさのカウワイや小鯛を上げている人もチラホラ見えます。やはり餌無し、撒き餌無しのサビキでは分が悪いのでしょうか?
私の釣っている階段の上では、中学生くらいの女の子と、その弟らしい男の子が、プラスチック製のトラップ(三河地方での呼称:てんもく)に小麦粉みたいな粉末を入れ、水中に沈めています。数分経ってから上げると、中には例の小魚が五~6尾入っています。
『ははぁ、あの手があったか!』
と、感心していると、姉弟たちは次から次へと小魚を捕ってはバケツに入れています。どうやら船で沖へ出て釣るときの生き餌にするようで、出航前の子供の仕事として、お父さんに言いつけられたようです。
やっぱりなにがしかの餌を使わないと釣れないかなぁ....と、ひたすらロッドを上下にしゃくっていると、コックンという当たりに続き、プルプルプルという手応えが伝わってきました。小さくても今日の初物、1尾は1尾。ココロもプルプルと震わせて釣り上げてみると、ボラを7割、イワシを3割で混ぜたような、gray mullet という魚が釣れました。大きさは15cmほどあります。群れの中で、大きいヤツならなんとかサビキのハリをくわえられるようです。
『やったネ!』
と、思わず声を上げたくなるのを、周囲の子供の手前、ぐっとこらえ、そのマレットを、餌にするためにビニール袋に入れておきます。
さてさて、2尾目を狙うぞ! と士気高く次の一投を群れの当たりに 沈め、再びシャクリを始めると、突然、
「パカンッ!」
という音とともに頭上に何かが降ってきました。
『痛てててテテテ.....』
と頭を押さえながら上を見ると、私の真上の桟橋で釣っていた男の子が、タックルボックスを手すりから落としたのでした。(笑)
「ベリーソーリー!」
と、彼に神妙な顔で謝られては、返す言葉も無く、
「いっつおーらい....おーらい....」
と、作り笑いをして、落ちて来た重いタックルボックスを拾い、男の子に返してあげました。
階段を降りるついでに件の姉弟のバケツを見ると、すでに30尾以上が捕れたようです。見下ろすと、トラップから流れ出す撒き餌の匂いに誘われて、あまたのマレットが我先に集まっています。
「これはひょっとして.....?」
と、思い当たるものがあり、お姉さんらしき女の子の隣で釣らせてもらうことにしました。(笑)
いそいそとロッドを持って移動した私の読みは的中し、撒き餌に興奮したマレットたちは、疑うことなく私のサビキをくわえ込み、次から次へと小気味よく竿を絞り込んでゆきます。ほとんどワンキャスト・ワンフィッシュ状態で、あっという間に10尾ほどを釣り上げることができました。ほとんど小判鮫のような釣り方ですね。(笑)
さて、これで餌も確保できました。次はもう少し大きな魚を狙うこととして、ちょうど場所が空いた桟橋突端に、N君と共に陣取ります。満潮まであと1時間。満ちてきた潮を見つめながら、ラグラン湾の底深くへと、サビキのハリに付けられたぶつ切りのマレットの身が沈んでゆきました。(続く)